松さんちに男の子、うまれた。
陽翔(はると)くん。
ちっちゃい!かわいー!
松さんは小学校からの友達で、
3年生のときに転校して来た。
私も2年生のときに転校して来てたから、
転校生同士ということで、こちらはしんきんかんと興味まんてんで接近。
転校生というものは、とくべつな輝きがある。
背中から、ぴかーと光がでてるのだ。
とにかくまぶしい。
色白で、薄い茶色の腰まで長い髪の毛で、
きれいに襟付きの白いブラウスとプリーツのスカートをはいたおんなのこ。
着古したTシャツ短パンが主流コーデの私たちの目には、ほんとに清楚なお嬢様に映った。
そして、なにより一番わたしたち東京下町ッ子をわきたたせたもの・・・
松さんは、関西弁だったのだ・・・!
まだ仲良くなって日も浅いある日
いつものなかよしチームでの下校
「公園であそんでかえろ〜」という誘いにみんな「いこー!」の返事。
松さん以外は・・・
「うち、 おうちかえらなあかんねん!またねーー!」
テレビでしかきいたことないかんさいべんで
きっぱりした口調で ことわりのことば
赤いランドセルと
うすい茶色の長い三つ編みの一本おさげを振って パァッと走り去っていく後ろ姿
残された私たちは
あんなにさわやかに断られて、かんさいべんで、ちょっと振られた気分で、
走り去っていく姿がスローモーションでリフレインで
なんだかとっても衝撃的だった。
はじめての失恋兼、異文化コミュニケーションだったのかな。
あのときのはなし、みんなで集まるといまだにするものね。
急に帰っちゃってきけなかったこと
「あのとき、なんで帰ったの?」
そんな松さんも、次第に下町に染まり、いつの日かクラスで流行のジャージになったね。
関西弁、もうわすれちゃったわ〜wwって言ってたね。
おめでとう、お母さんになったんだね。
うれしいなあ、早く逢いに行きたいよ!
ほんとにおめでとう!
「 んっ?あのとき?ドラマの再放送観に帰ったんだよね〜〜ww」